リヒトくんが「魔女考察」をするたびに、
 クラスのみんながちょっとずつ変わっていくのがわかった。

 なんていうか……、みんな、「考える」ようになったんだと思う。

 そもそも、魔女がどうして忌み嫌われるようになったのか。

 歴史を習っても、肝心なところが出てこないのだ。

 わたしたちは、ううん、きっと、おとなたちさえも知らないだろう。

 リヒトくんのことがなければ、疑問に思うこともなかったと思う。

 それが、いいことなのか、悪いことなのか……。

 まだ、わたしの中でこたえは出ていない。

 ただ、先生……、
 とくに、担任の田村先生は、
 この教室に流れる空気の変化に気づいたみたい。

 リヒトくんは、
 たったさっき、職員室へ呼ばれていったところだ。

 わたしは図書準備室でユキちゃんとごはんを食べつつ、
 視線で「心配だね」と会話してた。

 その時だった。



「二年A組の、鳥居カナ。
繰り返します。
二年A組の、鳥居カナ。
教務室の田村先生のとこまで来てください」



 スピーカーから放送が流れてきた。

 ……、なんだろう。何か、嫌な予感がする。

 わたしは急いでおにぎりを食べきると、
 ユキちゃんに手を振って部屋を後にした。

 教務室の田村先生のところでは、
 リヒトくんが何か言われているようだった。

 あれ? 
 あそこにいる銀ぶち眼鏡が似合っている、めちゃくちゃ美人な女性は……。