リヒトくんが転校してきて二週間。

 彼は、ちょくちょくわたしの周りに顔を出す。

 どうやら、分厚い反省文……いや、もはや論文?
 を書こうと思っているのは本気らしく、わたしについて回るのだ。

 例えば、リヒトくんが転校してきたばかりのころ、こんなことがあったんだ。




◆◆◆



 ある日の中休み。

 教室でおなじみの読書タイムをしてた時のこと。

 わたしが読んでいたのは、「ファッション★ミッション」。

 この小説は、大人気でアニメ化もされている。

 主人公が様々な衣装を着て、
 いろんなミッション(課題や問題)を解決していくんだ。
 
 お小遣いをためて、最新刊を買ったんだよね。

 ただ、わたしが何を読んでるのか知られると
 やっかいなことになるかもしれない。

 ってことで、いつも本のカバーを自作してるんだ。

 その時も、夢中で読んでいたのだけれど……。



「よ、カナ。何読んでんの?」



 声をかけてきたのはリヒトくんだ。

 当然、教室の空気がぴりつく。

 わたしは机の中からノートをとりだした。

 急いで、ボールペンで【ジャマしないで】とノートに書く。



「つれないこと言うなよ。
魔女って、どんな本読むんだ?
やっぱ、難しい、固い本?
『一般人』になじむ努力しろ、みたいなヤツ?」



 ん~、まあ、固い本も読むよ。

 それこそ、『一般人』に災いを与えた魔女についての本とか。