梨田さん、わたしのこと、「カナ」って名前呼びしてる!

 いつの間に?

 梨田さんはリヒトくんにむかって人差し指を立てて、
 「静かに」のポーズをした。

 リヒトくんは、わかっているというばかりにうなずく。

 これは、ひょっとして……、ヒミツの共有?

 梨田さんは、政府を信頼してるって言ってたけど……。

 ホントは、わたしのことを信じてるってこと?

 それを、わたしのことを名前呼びにすることで、
 リヒトくんとわたしに伝えたんだ。

 そう、考えていいのかな?

 わたしの都合のいいように、とらえちゃっていいのかな?

 だったら、すごくうれしい。

 とまってた涙が、再びあふれだした。



◆◆◆




 それから……。

 わたしと梨田さん……。
 ううん、ユキちゃんとの小さな昼食会は、変わりなく続いたのだった。