「わ、カナ、そう怒るなって。
この質問は、おれの反省文に必要なものなんだよ」

「反省文って……、今朝、田村先生に言われてたやつですか?」



 わたしの疑問を、梨田さんがぶつけてくれる。

「そ。
どうせなら、『魔女に関する一考察』って、
レポートなみに分厚くしてやろうと思って」



 にしし、と笑うリヒトくん。

 わたしも梨田さんもあっけにとられた。

 いったいどういう神経をしてたら、
 そこまで反省文を前向きにとらえられるんだろう。



「おれは、この反省文に、真面目に取り組みたいと思ってる。
だから、ユキの意見が聞きたい」



 リヒトくんの顔からは、いつの間にか笑みが消えていた。

 息をのむくらいきれいで、真剣な顔。

 梨田さんはしばらく考えて……。



「……わたしは、政府を信頼しています。
『漆黒』の首輪の罰を受けている最中の魔女が災いを起こすということは、
きわめてまれなこと。
だから、カナさんは、公共交通機関もつかえるし、学校にも通える。
一般人と同じように教育を受けさせてくれる政府は、とても慈悲深いと思います」



 さすが、春のテスト学年一位の頭脳!

 ここまで的確にこたえられる生徒なんてそうそういないよ。すごい!

 わたしがむふ~っと息をつくと、
 リヒトくんも梨田さんも、わたしの方を見てほほ笑んだ。



「なるほど、カナではなく、政府を信頼、と」

「はい。カナさんではなく、政府をです」



 確認し合うように、ふたりは繰り返す。

 ……ん? ちょっとひっかかるような?

 ……あ。