はっと目が覚めた。

 どうやら、うたた寝をしてたらしい。

 シートに座って、がたん、ごとんと揺られている感覚。



 そっか、わたし、登校中だった。



 寝ぼけた頭で、ここが電車の中だということを思い出す。

 それにしても、おかしな夢だった。

 金色のオオカミに名前を呼ばれて、一緒に歌おう、と誘われる夢。

 カナ……。下の名前で呼ばれるなんて、久々だ。

 「魔女」とか、「アレ」とか……。

 よくて、苗字の「鳥居(とりい)」って呼ばれるのがほとんどだもんね。

 それにしてもメルヘンだったなあ、と思わず苦笑する。

 同時に、安心した。



 あれは、「魔女の夢」じゃない。
 わたしが、魔女の力をつかったわけじゃないんだ。



 ちょっと体の向きを変えて、電車の窓を鏡がわりに自分を映す。

 肩まである深い青色の髪は、そろそろ切りそろえたいと思っているところだ。

 薄い水色の瞳は、まだ眠気が残っているのか、とろんとしている。

 そして、何よりも確認したかったのが……、首元だ。


 ……うん、変わりないね。



 首にしっかりとはめられた、罰の証(あかし)の黒い首輪。

 わたしがしゃべろうとすると、この首輪はわたしの首をしめあげる。

 それが、魔女への罰だから。

 指でついっと首輪をなぞると、金属製のそれはひやりとしていた。

 いつもと同じ感覚なのに、なんだか、心がじりっと痛む。

 あの夢の中の温かさが、本当に幻なんだなってわかったから。