どこか現実味がなくて、ぼんやりとした世界。

 そっか、そうだよね。

 普通、こうなるよ。

 大上くんが発した、「友だち」という言葉。

 それにちょっと期待した、わたしがいた。

 この時間だけ。

 お弁当を食べるこの時だけは、
 わたしは自分が魔女だってことを少し忘れられた。

 一年生の時はひとりぼっちで食べていた、味気ない昼食。
 
 それが、梨田さんが来て……。

 その食べてるブロッコリーおいしそう、とか。

 目にかかってる前髪、
 短くした方が美人だってことがよくわかるのに、とか。

 読んでる本のタイトル、面白そうだなぁ、とか。

 無言の時間だけど、あまり苦じゃなくて。

 小さな小さな発見を、積み重ねていた毎日が、いとおしくて。

 そっか、わたし……。

 勝手に、梨田さんのことを、「友だち」だと思ってたんだ。

 ……ああ、
 忌み嫌われている魔女のくせに、思い上がるにもほどがある。

 胸が苦しい。目の奥が熱い。

 のどの奥がぐわーっと熱くなって……。

 目の端から、熱いものがこぼれる感覚。



「あ……」



 短くつぶやいたのは、梨田さんだったのか、大上くんだったのか。

 気が付いたら、わたしはほろほろと涙をこぼしていた。

 とまれ。

 とまってよ。

 なさけない。こんな姿、だれにも見られたくない。

 そう思っても、涙はとまらない。