そんな声とともに、
 「失礼しまーす」と、ノックが響きわたる。

 次いで、がらっとスライド式のドアが開けられた。



「あ! いたいた。魔女さん見っけ。
……えーと、もうひとりのキミも、同じクラスにいた、よな?」



 入ってきたのは、大上くんだった。

 なんで? どうしてここに⁉

 きっと、梨田さんも同じことを思っていただろう。

 顔がこわばっている。



「なんだ、魔女さんにも友だちっているんだなー」



 明るく、なんてことのないように言う大上くん。

 ドアをぴしゃんと閉めて、わたしたちの方へ向かってくる。

 ……友、だち?

 わたしはおそるおそる梨田さんの方を見た。

 彼女の顔は、痛みをこらえるように、ぐしゃりとゆがんでいた。



「友だちなんかじゃ、ない!」



 いつものおとなしい梨田さんの、かすれた大声。



「これは、違うの。
たまたま、お昼を食べるのが同じ部屋になっただけ。
それだけなの。
お願い、わたしが魔女と一緒にいたなんて、だれにも言わないで!」



 梨田さんが勢いよくまくしたてる。



「ちょ、ちょ、落ち着けって。な?」



 大上くんがなだめても、梨田さんはとまらない。



「魔女なんかと一緒にお昼食べてたなんて知られたら、
わたし、密告されるかもしれない。
魔女の仲間だって……。そんなの、絶対に嫌!」



 必死になって叫ぶ梨田さんを、
 わたしは薄い膜を通しているような感覚で見ていた。