それにひるむことなく、大上くんは言葉を続ける。
「プリン食中毒は、あの子の言うことを聞いてプリンを食べなければ、事件は防げた。
車の事故だって同じだよ」
澄み切った金の瞳で、よどみなく大上くんは話す。
「おい、やめろ」
佐野くんがとがめても、大上くんはとまらない。
「あの子がみんなをとめたから、
犠牲になったのは運転手ひとりですんだんだろ?
それって、災いっていうより、みんなを救っ……もがっ」
佐野くんが、手で大上くんの口をふさいだ。
「それ以上は、やばい。絶対に言うな。
反省文どころじゃない。
オマエも魔女になっちまうぞ」
真剣な表情で、佐野くんが大上くんに忠告する。
「リヒトくん、まさか、魔女崇拝者じゃないよね……?」
おびえたように、だれかがつぶやいた。
魔女崇拝者。
魔女の力を善、つまり、良いものとしてとらえている人たちだ。
そういう人たちは、巨大な力をもつ存在として、魔女をあがめている。
もちろん、そんなことをすれば犯罪だ。
ぺりっと佐野くんの手をはがし、
大上くんは「崇拝とか……、するわけないだろ」と少し怒ったように言った。
それに、教室の空気がほっとしたものになる。
「いいか、リヒト。
オマエは宇土島っていうちょっと特殊な環境にいたからわからないかもしれないけど、
本島では魔女にめちゃくちゃ厳しいんだ」
佐野くんがマジメな顔をし、それにこくこくと五十嵐さんがうなずく。
「そうよ。魔女についてる監視士なんて、
魔女に好意的な人物を見つけるために、盗聴してるってウワサよ」
「ああ。魔女がいないか目を光らせてる、
魔女監視庁の特別職員も周りにまぎれてるって話もある」
みんなも、大上くんに向かって注意をする。
「監視士の盗聴に、特別職員ねえ……」
苦笑いする大上くん。
「ホントにいるんだからな!」
「そうそう、気をつけろよ!」
心配するように、みんなが声をかける。
「……わかった。肝に銘じておくよ」
そうこうしているうちに、
休み時間が終わりのチャイムが鳴り、みんなパラパラと席にもどっていったのだった。