「ねえねえ、リヒトは魔女についてどれくらい知ってる?」



 いつの間にか、五十嵐さんはリヒトの横にイスを移動させて座っていた。

 かわいらしく首をかしげて質問する。



「うーん、なんか、みんなに災いをもたらしたら、
 男女問わず、魔女になるんだよな?
 男でも魔女って言うんだ~。
 って、そんくらい」

「そうそう。アレも、災いをもたらしたから、魔女になったんだよ」



 アレ。そう、五十嵐さんが言ってこちらにみんなの視線が向く。

 わたしはいつも通り、知らん顔をして本を読むフリを続けた。



「……どんな災いなんだ?」

 リヒトの問いに、わたしは自分の罪を思い返していた。




◆◆◆

 最初は、小学校三年生の時だった。

 夢を見たんだ。

 給食にプリンが出たって夢。

 みんながおいしそうにプリンを食べて……、そのあと、苦しみだした。

 もちろん、わたしも気持ちが悪くて、お腹が痛くて。苦しくて、苦しくて……。

 汗びっしょりで、目が覚めた。

 不思議に思いながら学校へ行くと、夢の通りプリンが出てきた。

 だから、先生に夢のことを伝えたんだ。

 きっと、プリンを食べたらみんなが苦しむ。だから、食べたらダメだって。

 先生は笑って、そんなことはないと言った。

 でも、わたしはその夢を思い出して、食べられなかった。

 プリンを残して給食を終えたんだ。



 そして、事件は起きた。



 それは……、食中毒。

 原因は、給食のプリン。