わたしは、リヒトくんと歌を歌い切ったあと、意識を失った。

 次に目覚めたのは、病院。

 どうやら、熱中症になってたらしい。

 新しい監視士さんが教えてくれた。

 わたしの首輪がどうしてはずれたのか、
 監視士さんは首をひねっていたっけ。

 わたしは新しい首輪をつけて、日常を過ごしている。

 あの会場であったことは、
 政府によって情報規制がされて、「なかったこと」になった。

 だから、わたしも魔女裁判にかけられることはなくなったのだ。

 それは、ほっとしている。

 だって、死刑になったらリヒトくんに会えないから。

 そう、リヒトくん。

 あれから、リヒトくんは煙のように消えてしまった。

 無事、大和国を脱出して、エーファースト国に帰ってるよね? 

 それだけが心配だったけれど……。

 ある日、夢を見たんだ。

 それはね。




◆◆◆



 ひらひらと、紙が舞う。



「大和国、開国! 魔女制度も廃止!」



 そう、大きく書かれた紙だ。

 ……そっか。

 魔女制度、廃止になったんだ。

 わたしは首元に手をやる。

 そこに、いつもの感触はない。



「やったんだね、リヒトくん」



 そう、声に出して言うこともできる。



「ああ、やりとげた」



 振り向くと、金色のオオカミがいた。

 ウオオオォォォンと、遠吠えをする。

 それは、よろこびの声に聞こえた。

 オオカミが光に包まれ、徐々に人型にかたちをかえていって……。

 それは、リヒトくんの面影のある、青年の姿になった。

 大人になった、リヒトくんが笑う。



「だから……、迎えに来たんだ、カナ。……だれよりも、愛してる」



◆◆◆



 わたしたちは、魔女狩りの世界の果てで、愛を歌った。

 その愛は……、わたしの世界を、国を変えてくれたんだ。

 大好き、ううん、愛してるよ、リヒトくん。

 だから、きっと……、迎えに来てね。


【完】