「……くっ」

 とても嫌そうな顔で、何か言いたいことはあっただろうけど、我慢したように見える晩くん。

「ということですので、加賀美先生、あとはお分かりですわね?」

 にやりと悪魔な微笑みを浮かべた朝比奈さんが瞬時にその表情を引っ込めて、加賀美先生のほうを見る。

「ああ、すべて元に戻しておくよ」

 先生はやれやれといった様子で頷いた。

「では、いつでも見ていますわね。ごきげんよう」

 朝比奈さんが、つかつかと歩いて嵐のように去っていく。

「まったく、なんだったんだ? お騒がせなお嬢様だな」

 呆れたように加賀美先生が言う。
 でも先生もほっとしたような顔をしていた。

「あの、女……っ、勝手に……!」

 晩くんは集めた紙を手でぐしゃりと握りつぶしています。
 そうですよね、好きでもない私のことを好きだと朝比奈さんに勘違いされて怒ってるんですよね。
 だって、晩くんが男である私を好きになんてならないですもん。

「雪ちゃんはボクのなのにね。大好きだよ」

 灯くんは少し離れた場所から手を振ってくれています。
 私も大好きです。友達嬉しい。

「ああ、愛しい雪くんの赤ちゃんほっぺが……」

 光くんはなんか、ハンカチを持って手洗い場のほうへ走っていってしまいました。
 どんなときでもキラキラしています。

「雪ぃ! おかえり! ちゃんと飯食ってたか?」

 闇くんは相変わらず、私のご飯の心配ばかりしてくれます。
 いま、その手を掴みます、と思ったけど

「ひぁ……」

 一気にいろんなことが駆け抜けて、気が抜けて、私はぺたんと地面にへたり込んだ。