「わたくし、気付いてしまいましたの……」

 目の前で彼女の表情がどんどん変わっていく。

「白鳥くん、いえ、雪くんのことを愛する東条様にわたくし、恋をしていたのだと……」

 ――はい?

 自分の胸に手を当てて酔いしれるような言い方をする朝比奈さんを見て、私は固まった。

「だって、雪くんを目で追う東条様の視線が熱くて熱くて、生徒会全員を巻き込んでまで雪くんのことを守ろうとするお姿は本当に凜々しくて誠実で素敵で……」

 両手を合わせて、キラキラとした瞳でそのときのことを思い出すように宙を見る朝比奈さん。まるで何か、すべてを見ていたような話し方だ。

「だから、わたくし、お二人を応援することに力を注ごうと思いましたの。特に雪くん、わたくし、大ファンになりましたわ。あの泣きそうな顔があまりに可愛らしくて、生徒会の皆様からこうやって一心に愛情を注がれるのも頷けます。皆様、雪くんのことを愛してらっしゃるのね」

 朝比奈さんの一人しゃべりが止まらない。
 私以外もみんなポカンとしている。
 これは一体、何が起こっているのだろう、と。

 そして、それは突然のことだった。

「これまで意地悪なことをしてしまってごめんなさい。これからは一番のファンとして、雪くんをお守りいたしますわ」

 気付けば、私は朝比奈さんから左頬にキスをされていた。

 驚愕で「なっ」と重なる五つの声。

「へ?」

 相手が女の子だったとしても誰かにキスをされるなんて初めてで、顔がぶわわっと熱くなる。

「きゃー! 真っ赤になっていて可愛らしいですわ! お写真、一枚よろしいかしら?」

 スマホを取り出し、テンション高く勝手に私のことをパシャパシャと撮り始める朝比奈さん。

「はぁ、尊い。この可愛らしいお写真でわたくしのお部屋の壁一面を飾りたい……」

 なんか、朝比奈さんから限界オタクに近いものを感じた。