「加賀美先生、こちら、いいお部屋ですわね」

 朝比奈さんがゆったりとソファに座りながら、加賀美先生の休憩室を見回す。

「そりゃ、どうも」

 壁際に立った加賀美先生は困惑するようなそんな表情で返事をした。
 私はそんな先生の横に立っている。

「ですが、東条様、こんなお時間に呼び出すなんて、少し非常識ではありませんこと?」

 ソファに対面するように椅子に座った晩くんを見て、朝比奈さんが言った。
 いまは夕方の六時半を過ぎていて、もう陽は沈んでいる。

「レディをあまり待たせるのは良くないと思ってな」
「あら、紳士的ですこと」

 冷たい瞳の晩くんと悪魔な微笑の朝比奈さん。

「それに生徒会の皆様もおそろいで」

 わざとらしく朝比奈さんが晩くんの後ろに立つ生徒会の三人を手で差す。

「お前が提示した条件のために呼んだんだ」

 彼女にそう言ったあと、晩くんが私に「すまない、三人に話した」とアイコンタクトした。

 それに応えるように私も「いいえ、分かっています」と黙って首を横に振る。

 もとはといえば、私が生みだした問題だ。

 生徒会のみんなはどうして私をそんなに守ってくれるの?
 自己を犠牲にしてまで、私なんかを……。

 胸が苦しくなる。

「そうでしたか」

 立ち上がって、一歩一歩と朝比奈さんが生徒会メンバーの後ろを歩く。
 その足はすぐに止まった。

「でも、結構ですわ」

 ぴしゃりと朝比奈さんが言い放つ。