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 予想していたより、合宿は本当にスムーズに進んだ。

 二日を掛けてのこの地を知るための謎解きハイキングは雫ちゃんとなんとか制覇したし、お昼も楽しく二人で作ったし、夜寝泊まりするところは今回だけ親衛隊の特権で一人部屋で、すごく平和だった。

 生徒会の四人と接触する前に「雪くん」って雫ちゃんが声を掛けてくれるから、初日の朝以降、彼らと会ってない。

 雫ちゃんはこの合宿が終わっても私と友達で居てくれるだろうか。

 はぁ……、あとはこの後にあるキャンプファイアーで、ぼーっとしてれば終わるはず。

「雪くん」

 辺りが暗くなり始めて、広場の中央でバチバチとキャンプファイヤーが燃え始めた頃、雫ちゃんが私の手を握ってきた。

 顔を見ると、何か困っているみたい。

「どうしたんですか?」

 困ってる人には手を差し伸べるように、と家では教育されてて、私は雫ちゃんに尋ねた。

「あの、私、昼間に落とし物しちゃったみたいで、一緒に……探しに行ってくれたりしますか?」

 もじもじしながら雫ちゃんが泣きそうな顔で言う。
 こんな表情をするくらいだ、きっと相当大切な物を落としたに違いない。
 ダメという理由が見つからなかった。