「そ、そんなことないです。嬉しいです。私、雫って言います。」

 頭を左右に振って、彼女が言う。

 なんて良い子なんだろう。最初から下の名前を教えてくれるなんて、友達になってもいいですよ、と言ってくれてるようなものじゃないか。

「俺、白鳥 雪です。よろしくお願いします」

 瞳をぱぁああっと輝かせそうになるのをぐっと我慢して、私も自分の名前を言った。

「知ってます。雪くん、いつも生徒会の中心にいるから」
「そう、ですよね」

 やっぱり知ってますよね。バケモノとか思われてるのかな。
 どよーんとする気持ちを抑えながら、私はオリエンテーションのしおりを開いた。

「あ、でも、私は気にしてないから……」

 手をもじもじとさせながら雫ちゃんは言った。

 ほんとなんていい子なんだろう。さすが、天使だ。

 彼女となら二泊三日のこの合宿を平和に楽しく過ごせそう、と思った。