「……」

 東条から去り際にすげえ怖い顔で睨まれた。

「待て」

 そうだ、大事なことを忘れていたと思って、黒いオーラを纏った背中を呼び止める。

「そいつ、人に服脱がされるのを嫌うから、脱がしてやるなよ? 嫌われても知らないからな」

 着替えさせられたら白鳥が人間であることも女であることもバレちまうからな。これは念を押して正解だろう。

「ちっ、クソが」

 小さく吐き捨てて、東条は白鳥を連れて去っていった。

 その姿を見送って、よく分かんねぇ疲労感でソファの背もたれにうなだれる。

「まったく……、独占欲が強ぇこと」

 出会って一週間も経ってないのに、あんなに独占欲丸出しとは……。
 まるで、お気に入りのおもちゃを取られた子供みたいだったな。
 まあ、俺も人のこと言えないか。

「あー、振られちまったかな」

 伸びをしながら、冗談交じりに独り言を言ってみる。

 振られるも何もないか、相手は人間の子供だ。
 人間界のルールだったら、本当に犯罪だ。

 ――だが、あの子だけはマジで守りてぇな……。