◆ ◆ ◆

「ん……」

 ふと目が覚めて、ぼんやりとする視界。
 部屋の中、ベッドライトだけで薄暗いや。
 カーテンの隙間から見えている窓の外はまだ暗いし……、まだ夜か……。

「んー」

 もっと寝ようと思って寝返りを打ったときだった。

 ――あれ?

 不機嫌そうな東条くんの顔が視界に入ってきた。
 ベッドに肩肘をついて、私を見つめてる。
 もしかして、加賀美先生って誰かに変身も出来たりする?

「あの、先生、なんかふざけてますか?」

 思わず、尋ねてしまった。
 私の苦手な東条くんに変身するなんて、意地悪過ぎる。

「おい、お前がふざけんなよ」

 すごく冷たい言い方だった。
 怒ってる。

 ――あー、これ加賀美先生じゃない、かも。だって、そういえば、先生の休憩室にはベッドなんてなかったもん。

「東条くん? 俺、先生のとこで寝てませんでしたっけ?」

 身体を起こしながら私は東条くんに言った。

 食堂で親子丼をごちそうになって、着替えもないから、明日、寮に戻ってきてシャワー浴びればいいかと思って、ソファで横になってたら寝ちゃって……。

「俺が連れ戻した。お前、もう加賀美のとこに行くな」

 東条くんも身体を起こして私と向き合う。

 なんてことをしてくれたのだろうか。
 せっかくの安心時間が。

「でも、俺にだって、一人になりたいときはあるんですよ」

 いじけるように手をもじもじとさせながら控えめに言う。
 いくら生徒会の親衛隊隊長だからって四六時中生徒会と一緒にいる必要はないはずだ。

「っ、お前は俺らのモノだろうが」
「ふぇ?」

 突然、ぎゅっと右手を握られてびっくりする。
 東条くんがこんな行動に出るとは思っていなかった。