寮の前がざわざわとしている。
 そのざわざわが私たちが歩くのと一緒に移動する。

「なんですか、これ」

 守る側の私が生徒会の四人に囲まれるように守られていて、さらに私が実力試験でとんでもないバケモノになってしまったせいで、昨日までのことが嘘みたいに生徒たちは少し離れたところから私たちを見ている。

「ふん、いい抑止力になったじゃねぇか」

 東条くんはいつも無愛想なくせに、今朝はこの現象を見て、少し嬉しそう。

「雪、お前、絶対一人になるなよ?」

 闇くんはなんか私のことをすごい心配してくれています。
 保護者みたいです。

「雪くん、首輪……あ、腕章曲がってるよ」

 光くん、いま、腕章のこと首輪って言いました。
 でも、直してくれてありがとう。

「授業で会えないの寂しいよ、雪ちゃん。充電させて」

 灯くんは手を繋いで、私から何かを吸い取っています。
 すっかり子犬みたい。

「お前……! おい、雑種! そいつに触らせんな! 行くぞ!」
「え、ちょ、ちょっと」

 東条くんは私を灯くんから引き離して、また怒っている。
 でも、たしかに邪魔だとは思われてないみたい。
 むしろ、私を強引に独り占め……あれ? もしかして、私のこと取り合ってます?

 気付いてしまった。
 昨日、灯くんが言ってた取り合うってこういうこと?

「バケモノかつあの顔ってどういうことだよ」

 道行く生徒が何かを言ってくる。
 文句ですよね、すみません。

 でも、これだけは言わせてください。

 もう目立ちたくないとかは言いません。
 ただ、放っておいてください。