「なあぁああああ!」
「なさけない声出すな」


 たしかに、女の子らしい悲鳴なんか口から出てないけど、逆に今はそれでいいんだけど、まさか、私を担いだままあんなに背の高い柵を跳び越えるなんて思うわけないじゃん! 知ってたけど、こんなの人間技じゃない!


「到着」


 シュタッと、ありえないくらいスマートに地面に着地して、彼は私をそこに降ろした。

 生まれたての子ヤギかってくらい、立ってるのもやっとな感じの私。

 ――こ、怖かったぁぁあ! お、お礼言わなきゃ……。


「あ……、ああ……」


 ダメだ、怖さが抜けなくて、声帯が生まれたての赤ちゃんだ。

 男の子が私を見て、にやりと笑う。


「じゃあな、低能天使」
「うひゃあ!」


 背中を思いっきり叩かれて、私の口からは変な悲鳴が出た。
 ふっと笑って、去っていく名前も知らない男の子。

 ――この、悪魔……っ。

 私はメガネの下から恨めしげな瞳を去っていく背中に向けた。

 ……そう、ここは天使と悪魔の学校。

 私立聖天魔学園。人間界に存在する天使と悪魔のお金持ち全寮制学校である。