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 ――ひぃぃぃ! 朝から顔がいい! 怖い! 魂取られる!

 次の日の朝、目覚めた瞬間、私は心の中で悲鳴を上げた。

 なぜなら、何が起こったのか、私の横で東条くんが眠っていたからだ。
 いや、私がいつの間にか東条くんのベッドに入って寝ていたから。

 ――なんで? なんでだっけ? だって、私、ちゃんと東条くんの迷惑にならないようにソファで寝たよね? え? 女だってバレた?

 起こすのが怖くて、一ミリも動けない。
 長い睫毛、顔がすごい整ってて、語彙力がなくなる。

「うるせぇな」

 ぼそりと寝起きのかすれた声で東条くんに言われた。
 あ、起こしてしまいましたか?

「あの……、何も言ってないんですけど」

 そうだ、私はたしかに心の中がうるさかったかもしれないけど、表上では静かだったはずだ。微動だにしてない。

「気配がうるせぇ」

 目をつむったまま東条くんが吐き捨てる。

 気配がうるさいとか言われたことないんですけど、それってどうしたらいいんですか。

「……」
「なんか言えよ」

 とりあえず黙ってみたら、文句を言われた。

「うるさいって言ったじゃないですか」

 うるさいのか、うるさくないのか、どっちなんですか。

「……俺はどうして、ここで自分が寝てるのか気になっただけで」

 とりあえず、この謎を解明したい。

 そりゃ心の中で悲鳴を上げるくらいにはびっくりしたわけで。

「こっちのほうが疲れが取れるだろ。あんなところで寝たら背中痛くなるぞ」

 片目を開いて、東条くんは静かに言った。

 ほえええ、優しい。
 格好良いとか言われつつも無愛想とか冷酷とか言われてる生徒会長様にそんな一面があったとは。これは私が地味な男だからでしょうか。

 きっと、自分に被害を被るようなしつこい女子とかには冷たくするんだろうな。
 生徒会長様も苦労なさってるってことなのかな。