「へ?」

 東条くんに腕を引っ張られて、また肩に担がれた。
 軽々荷物を担ぐみたいに担がれた。

「分かってるよ」

 どんな顔してるか分からないけど、たぶん、灯くん、唇とがらせてる気がする。

 その表情を確認する暇もなく、東条くんは私を担いだまま階段を上った。

「東条くん、重くないですか?」

 淡々と尋ねる。
 ここで自分の体重を気にしたら、女だってバレる気がした。

「重くねぇよ。朝も思ったが、お前ちゃんと飯食ってんのか?」

 遠回しに軽いと言われました。
 思春期の女子としては嬉しい発言です。
 太りたくありません。

「なぜ黙る? 勘違いすんなよ? さっきのは自分のモノを奪われんのが嫌だっただけだ」

 ――ほほう、東条くんは、もう私を私物化してらっしゃると。

「あのう、もう降ろしていただいてもいいでしょうか?」

 部屋に入って、いつまで私を担いだままなのだろうか、と思う。

 このままだと私には東条くんの背中か豪華なカーペットの床しか見えない。

「飯食ってくるから、大人しくしてろよ?」

 やっと降ろしてもらえたと思ったら、なんで先生も東条くんも私のことを犬や猫みたいに言うんだろうか。別に部屋をトイレットペーパーだらけにしたりしないんですけど。

 それよりも

「どうぞ、どうぞ、ごゆっくり」

 私は勢いよく東条くんを部屋から送り出した。というより、扉はまだ開いてるけど。

 よし、この間にゆっくりお風呂に入れる。ラッキー!

「お前、なんでそんなに嬉しそうなんだ? 飯は食ったのか?」

 扉の隙間から東条くんが尋ねてくる。

「はい、加賀美先生にごちそうになりました」

 お願いだから、心配せずに早く行ってください、と思う。

「そうか」

 やっと東条くんが扉を閉めて、私の前から消えた。
 
 はぁ……、威圧感からの解放。

 改めて見ると、お部屋はホテルのスイートルームみたいだった。
 この大きな建物にエントランスと部屋とちょっとした食堂しかないんだもの、そりゃ、一つの部屋は大きくなるよね。

 キッチンもあるし、生徒会の特権、すごい。