「加賀美先生、どこ行ってたんですかー?」
「サボりですかー?」

 教室に入った瞬間、怠そうな声があちこちから飛び交う。
 あきらかに天使組より雰囲気が悪い。
 これが悪魔の集まり……全然、キラキラしてない。
 ほぼ黒髪とか赤髪だし、ブレザーも黒だし、私、ここでも浮いてる。

「すまんな、一人、クラス間違えちまったやつがいてよ。迎えに行ってたんだよ」

 生徒たちと同じように気怠そうな雰囲気をまとって加賀美先生は教壇に立った。

「で、これがその白鳥 雪だ。今日から生徒会の親衛隊隊長に任命されたから、お前らいじめんなよ?」

 ぐだぐだのまま、私を紹介する先生。

 ――せ、先生、そんなこと言ったら、いじめてやれって言ってるようなものじゃないですかぁあああ! 

 キッと私が鋭い視線を向けると先生はニッと口角を上げて私を見た。
 この人でなし! いや、悪魔!

「東条、そういうことだから、こいつ、よろしくな」

 先生の言葉に私は教室の中を見回した。
 そして、黒い瞳と目が合う。

 忘れてた。生徒会長と副会長、このクラスだった。

「白鳥、東条の隣の席いけ」
「……はい」

 顎でくいっと示されて、渋々そちらに移動する私。

「なんだ、あいつ地味だな。人間じゃね?」
「いや、男だからないだろ」
「ああ、女だけなんだっけ?」

 教室真ん中一番後ろの席に座っている生徒会長のところに行くまでに、クラスメイトたちの視線が私に刺さった。

 すごーい目立つ。危ない危ない。

 待って、よく見たら、私の席、生徒会長と副会長に挟まれるじゃん。