満月に起きたそれは、ようやく訪れた解放の瞬間。



 誰の為に。
 何の為に。



 全ては月が知っている。



 ―――刺激は上々。



 花は、開花を始めている。
 求めるカタチになるのも、そう遠い日ではないだろう。
 だがもう一つ、やらなければならないことがある。
 新しいカタチを創るには、古いカタチを壊さなくては。

 ◇◆◇◆◇

 昔、おばあちゃんから言われたことがある。



 〝月があるから、この花は咲くのよ〟



 あれは、どこの景色だったか。
 一面花畑で覆われた場所で、おばちゃんは言った。
 雪のように白くて、触れれば溶けてしまいそうな、小さな花。一番近くにある花を一つ摘むと、おばあちゃんはそれを私に手渡す。



 〝大きくなったら、必ず来なさい〟



 どうしてと理由を聞いても、おばあちゃんは答えてくれない。ただ笑って、今はまだいいのよと言うだけ。



 その日の月は、とても綺麗だった。
 大きくて、キラキラ輝いて――。



 ――――でも、これはきっと夢だ。



 あんなに綺麗な月夜は、あの日以来見ていない。それに――。



 青い月なんて、在るはずないんだから。