昔々のお話。
 真っ暗な場所に、一つの存在がありました。
 次第にソレは、様々なモノを創っていきました。



 まずは光。
 次に炎、水、空気。
 星の中には大地を創った。



 ――しかし、それだけではただの飾り。



 動くモノが欲しいと、それまで創ったモノから、動く存在を創り出します。
 後に、神や悪魔。天使と言われる存在を。
 ソレは、とある場所で過ごすようになった。
 そこには様々なモノがいて、皆、ソレとは違いカタチを持っていました。それらと触れあってみたいと思ったソレは、自身をそれと似たカタチに成します。カタチあるそれは、他のモノが創った人間と呼ばれる存在で、他のモノからも好かれるようになっていました。
 最初は、どちらもうまくいっていました。でも……人間は、ソレの存在が恐ろしかったのです。見た目は同じでも、力は人間とは違う。少しの力で大地を割り、自分たちを簡単に殺してしまうその力が。
 人間の思いや信仰心は、ソレや、神や魔には糧でした。けれど、それが更なる悲しい結果を生みます。



【この世で最も醜い存在】



 ついに、ソレは人間からそう語られるようになしました。他の神には、善と悪の両面があるというのに、ソレには、絶対的な悪という烙印を。



〝――――それを望むなら〟



 人間の信仰を受け、ソレは望む姿を取ります。
 破壊。呪い。疫病。強姦。殺人……。
 あらゆる悪行に、ソレの名が使われました。
 そして人間は、時に、同じ仲間にそれを行いしました。
 たった一人に全てをなすりつけ、その人間を、ソレの化身だと謳い殺したのです。
 それを見て、ソレは絶望しました。
 もう関わることはしないと決め、薄暗い森の奥へと姿を消したのです。

 *****

 ただ、話してみたかった。
 ただ、笑ってほしかった。
 ただ――…。



 自由に、なってほしかった。



 全知全能だとお前たちは言う。
 しかし、干渉出来る事には限りがある。
 全ての願いは叶えられない。
 全てのモノを救えない。
 叶えるには、相応の対価と運がいる。
 崇めるモノ――全てはその一存。一生願い続けようやく叶うものもあれば、願った瞬間叶うものもある。
 思いどおりにいかないからと、信じるモノを貶(おとし)めようなど。



 何故……大事なモノを奪う。
 何故……眠らせてくれない。



 これ以上――何を望む。