創造と破壊は表裏一体。
 新しいモノを創るには、それまであったモノを壊すことも必要だ。



 ――まずはカルム。
 お前たちには、血を糧に生きるようになってもらおう。それも、生き血でなければならないように。
 幾ら代わりを作ろうと無駄なこと。清らかなモノが穢れれば、そう簡単には戻ることはできないということを、身をもって感じるといい。

「――血を飲まずに生きる方法がある」

 囁けば、そいつは懇願した。

「体を――捧げろ」

 戸惑ったものの、そいつは意を決し、申し出を受け入れた。――だが、あまりいい器とは言えない。それならば創ればいいと、華鬼と王華の血で、次の器となる者を創った。華鬼の長は、箱を封じている。その血があれば今度こそ……。



 ――次は人間。
 互いを信じる心に、疑いを植えつけよう。それも、近しい者に特に現れるように。
 幾ら許しを乞おうと無駄なこと。違う力を持つと言うだけで、群れから外される孤独を味わうがいい。



 人間は、我以上に残酷な生き物だ。
 生きる為でなく、快楽の為に同法を殺す。特に、女の扱いが酷い。女とは子孫、次なる道を生み出し、更なる高みへと行ける存在だというのに。
 それを……人間どもは忘れてしまった。

 *****

 深い森の中に、遥か昔に忘れ去られた古城がある。外観は古いが、中は未だに、手入れをされているかのような装い。奥へと進めば、そこには、ディオスの屋敷で見たような光景があった。
 大広間の中央に浮かぶ黒球。それは、美咲が飛び込んだ箱が肥大した状態だった。
 ニヤリ、怪しく口元を歪めるディオス。そこにはもう、レフィナドの痕跡は感じられない。
 ――黒球が、ゆっくりとその形状を崩し始める。
 中から現れた女性。その者は、飛びこんだはずの美咲とは違う容姿をしていた。髪は輝く白銀をし、瞳は、左右違う色を宿している。



「あぁ……その瞳だ。求める存在の眼差し」



 黒球から滴り落ちた液体が、女性の体にまとわりつく。それは次第に形を成し、ドレスに変化した。



「さぁ――次へ進もう」



「――――そうですね」



 二人は、塔の上を目指す。
 それぞれの思惑は違えど、女性は確実に、ディオスが望んだ存在に近付いていた。