「――――?」



 今見えているのは――自分?
 水面に映る姿がおかしい。
 日向美咲は、茶色の髪と瞳のはずなのに――。
 ゆらゆらと、数秒ごとに姿が変わる。
 髪が白銀だったり、紅だったり。
 瞳も左右違った赤や青だったり、両方が紫だったり。



 これは――前世の?



 ここに見える全てが自分だとすれば、それしか考えつかない。
 未だ、姿は定まらず変わっている。
 そろそろ決まってほしいけど――これは?
 どの姿になっても、髪が今よりも長い。肩までだった長さが、胸より下。尚も髪は伸びていき、その長さが腰にまで達した時――ようやく、姿が定まった。



「――――瞳が」



 その時の自分は、紫色の瞳をしていた。髪色は同じだけど、長さも違うから、なんだか落ち着かない。



『覚醒が近い』



 彼の声がそう告げる。
 ようやく、赤の命華になることができる。でも――。



「はぁ、はっ……ぁ、ぐ」



 心臓が、大きく脈打つ。
 覚醒をするというのは、こんなにも痛みを伴うものなの……?
 体から力が抜けていく。このまま倒れたらダメだと、なんとか後ろに行くよう、残りの力を込めた。
 誰かを呼ぼうにも、声はまともに出てくれない。どうやら、このままこうしているしかないようだ。



 …………そう、だ。



 叶夜と雅に、知らせよう。
 心に、二人の真名を連想する。



 ノヴァ……。



 エル……。



 どうかここに……来て。



 左手が、徐々に温かくなる。これで、二人には届いたはずだと安心し、余計に体から力が抜けた。



「美咲ちゃん――だよね?」



 近くで声がする。
 瞬きをすれば、戸惑いの表情をした雅が見えた。

「ぃ、やびっ――…」

「こら、ムリしてしゃべんないの」

 ふわり、体が持ち上げられた。

「ホントは覚醒年齢じゃないのに……。無茶するねぇ」

 覚醒年齢?
 それに達してないから、こうやって苦しくなるの?
 聞きたいのに、まだ声は出てくれない。
 徐々に痛みが増していき――がくんと、意識が途切れた。