目にしたのは――天井。
 何度か瞬きをし、ゆっくりと首を動かしながら周りを見る。



 次に目にしたのは――点滴。
 規則正しく落ちる水滴を見ながら、自分に起きたことを思い返した。



 そっか……また、倒れたんだ。



 起き上がり自分の体を見れば、特にケガらしいケガは無い。
 幼い頃から、こんなことは日常茶飯事。だから今度も、差ほど気にしていなかった。
 点滴が終われば、あとはいつもどおり診察をして、薬をもらえば終わり。 病気が治ればって最初は悔やんだけど、ここ数年、生活をする分では目立った不自由はない。
 だから、このままでもいいかなって、今では思い始めてる。大きな幸せはいい。これはこれで、幸せだって思うから。



 ――それなのに。



 月夜の出来事が、ささやかな思いを崩す。
 なにが起きているか、理解する間もなく――流れに、身を任せるしかなかった。