私は小さい頃から本が好きだった。
中でもファンタジー物語が好きで、現実離れしたお話が次から次に爽快に展開していく様が読者の心をくすぐるのだ。

一枚、また一枚ページをめくる。
『本は裏切らないもん…』
ポツリと溢した自分の言葉に胸が苦しくなる。

私は、本望ほのか 社会人4年目の24歳である。 社会にも、大人にも慣れ始めた年頃の女。 学生に戻りたいと思えないけれど、今よりずっと希望と夢があった。

繰り返される日常にうんざりしてしまう。
夜になるとどうしてもネガティブな気持ちに引きづられる。
こんな自分が嫌い

今の現状を変えたくても変えられない。
それが現実、日常の余裕の無さがそうさせていると分かっている。

そんな日常にも終止符が突然やってくるものだ。
ある日突然勤めている会社が倒産した。

『倒産…』
本望ほのかは、今のところ永久休日の無職になりました。
『クビになってしまった…
生活費、その他諸々どうしよう?!
実家に帰る?まってまって、それは無理だよ。心配かけちゃうし帰れない…』

私は、20歳の時父親が病気で亡くなって以来、片親である。
そんなお母さんに…クビになったと実家に帰るわけもいかず。
友達を頼るという選択肢はそもそも無い。
なぜなら、私には友達が1人もいないから。
学生時代、本に夢中で部活や人付き合いを蔑ろにしてきたツケが今回って来たのだと頭を抱えてしまう。

『ほんと…どうしよ。』
今にも泣きそうだ、人生こんなものかと。
そんな時、小さい頃の記憶がほんの少し蘇る。

『おばあちゃんの家…』
私のおばあちゃんは、田舎暮らし。
小さな頃よく連れて行ってもらっていたな。成長するにつれてあまり行けてなかったけれど、わたしはおばあちゃんが大好きで、いつも行ける時は楽しみにしていた。

おばあちゃんの家は本が沢山あり、
学校の図書室のような部屋があった。
行った時はそこで一日中物語を読むのがわたしの日課だったのだ。

しかし、おばあちゃんもその家も大好きだけど一つだけ、気になるというか苦手な場所があった。

家の裏に大きな森がある。
小さい頃、そこで一度遭難したことがあって、それ以来怖くてあまりおばあちゃんの家に近づかなくなってしまったのだ。
遭難している時の記憶は残っておらず、
恐怖だけが心に蓄積していた。

でも今は、そんなことを言っている場合じゃないとおばあちゃんに電話で連絡をとる。 

『〜というわけで…少しの間そっちに行ってもいいかな…?』

『いいわよぉ、ほのちゃん。おばあちゃん楽しみに待ってるからね』

電話を切った後、久しぶりに会話できたおばあちゃんの声に嬉しさと安堵した。