「え!? ちょっ……」
「医務室連れてく」
「え、だ、大丈夫だよ」
「いいから」
こんな……お姫さま抱っこなんてされたら、この前のことをまた思い出しちゃう。
……男の子の格好で、全然ロマンチックじゃないけど。

でも、聞こえてくる拓斗の鼓動だって少し速い気がする。

拓斗が連れてきてくれたのは、スタジオの中にある保健室みたいなところだった。
「なんだよ、誰もいないのか」
拓斗は慣れた様子で引き出しを開ける。
「あった。湿布(しっぷ)。果音、そこに座って」
「暑いから、カツラはずしていいかな。誰もいないし」
カツラと、ついでにメガネもはずす。
わたしが小さな丸いイスに座ると、拓斗が足元にかかんで、またズボンの裾をペラッとめくった。
「わー! だから自分でやるってば!」
「遠慮すんなよ、自分じゃ貼りにくいって」
「そういうことじゃなくてっ——」
「心配なんだから、やらせろよ」
拓斗がわたしの言葉をさえぎるように真剣に言うから、それ以上拒めなくなってしまった。