「まあとにかく、少し映るだけでいいからドラマに出てもらうよ」
「はあ……」
メガネをかけてあんまり顔が映らないようにしていれば、ママにもバレずに済むかな。
「さて、あとはショーンだな」
「ショーンも出るんですか?」
「ああ。といってもこれから交渉するところなんだけどね」
鳴川さんは面倒そうだ。
「拓斗や君と仲直りしてるっていうアピールと、話題作りのために絶対出てもらわなくちゃ困るんだ」
ショーンって演技できるのかな?
でも、今度こそショーンの炎上騒ぎがおさまるといいなあ。

なんて、気楽に考えていたんだけど……

♪♪♪

「緊張しすぎ」
翌日のわたしは、教室のセットの窓際に立って平然としている拓斗と理澄くんを前にガッチガチに緊張していた。
「結局セリフなくなったんだろ?」
少しはあるはずだったわたしのセリフは、緊張でかみまくるから全部カットになった。
上半身だけ、拓斗と理澄くんのクラスメイトとして、音声なしで会話してる雰囲気だけを撮影するってことになっている。
思わず拓斗の顔をジッと見る。
「なんだよ、ひとの顔ジッと見て」
「なんか……拓斗ってすごいんだなって思って。もちろん理澄くんもだけど」
みんなが当たり前のようにカメラの前に立っていることがすごいことなんだって、実感した。