それからしばらく、拓斗は何も言わずに抱きしめていてくれた。
わたしは彼の腕の中で少しずつ冷静になっていく頭で、ショーンのことを考えていた。
あんなにひどいことを言える人が、本当にママの好きな人なの?
たしかに目の色とか、耳の形とか、似ているところがあるかもしれないけど……ショーンはパパじゃないんじゃないかって、思い始めてる。

♪♪♪

翌日。
事態は思わぬかたちで騒ぎになった。
「おはようございます……」
ムジカのレッスンルームに顔を出す。
「おはよ」
拓斗と目が合って、思わずパッとそらす。
昨日は泣いて気持ちがたかぶっていたから大胆になっていたけど、あんな風に抱きしめられたなんて……家に帰ってから恥ずかしくなってしまった。今もまた思い出して顔がカァッとする。