口を開きかけた拓斗よりも先に、わたしが叫んでた。
「え!? 果音ちゃん!?」
驚く理澄くんを置いて、ショーンのもとにつかつかと歩み寄る。

「拓斗に謝ってください!」

「果音」
わたしがにらみつけると、ショーンはすぐに眉を寄せて不機嫌そうな顔になった。
「なんだよお前。誰?」
「拓斗は誰よりも長い時間、ダンスも演技も練習してます!」
「はぁ?」
「同年代のどのアイドルの子たちより、歌だってダンスだって演技だって上手いです! 社長の息子だとか、そんなの関係ない! 努力もしてるし実力もあります!」
「おい、果音! やめろよ」
拓斗がガマンできたって、わたしはできない。
「拓斗に謝ってください!」
「なんで俺が謝んなきゃいけないんだよ。お前、もしかしてユース? 事務所に言ってクビにしてもらうからな」
「あのアンケートに書かれてたことなんて、全部事実じゃないですか!」
プツッとキレて、なんだかもうブレーキがきかなくなってしまった。
「ショーンなんて、女好きでオジサンで、性格も最悪!! フィリックの方が100倍かっこいいもん!」
「はぁ!? お前、いい加減にしろよ! 芸能界にいられなくしてやるからな」
「そういうの最低です! かっこ悪いです!」
ショーンの後ろから、「ぷっ」って吹き出す声が聞こえた。