「拓斗は忙しいんだし、わたしなんかのこと気にしなくていいよ」
「〝なんか〟ってなんだよ。果音、なんか怒ってる?」
首を横に振る。
「怒ってなんてない」
「でもなんか、声が元気ないじゃん」
「……だって、お昼に莉子とだって楽しそうにしゃべってたじゃない」
ポツリとこぼす。
「わたしなんか、いっぱいいる女の子のひとりにすぎないでしょ。心配なんてしなくていい」
全然特別なんかじゃないんだから、ほうっておけばいいじゃない。
「なんだ、ヤキモチか」
拓斗もつぶやく。
「ちが——」
「果音のイトコで親友だからだよ」
「……え?」
「果音が特別だから、莉子にも優しくした。そのせいでトラブルになったみたいで悪かったけどな」
特別?
「顔真っ赤」
拓斗がニヤリと笑う。
「そ、そんなことない!」
「あーあ、その格好じゃなかったらな」
拓斗はクルッと向きを変えて、スタジオの方へ歩き出した。