♪♪♪

その日の夕方、ドラマの撮影が終わる少し前、莉子は用事があるからって先に帰ることになった。心配だったから「バス停まで見送りに行く」って言ったら、拓斗もついてきてくれた。
「拓斗くんお見送りありがとう! 理澄くんにもよろしく♪ 二人とも超かっこよかった! バイバ〜イ」
プシューってバスのドアが閉まって、莉子は帰っていった。
「なんか、正しい女子中学生を見たって感じだな」
二人きりでスタジオに戻る道で、拓斗が言った。
「悪かったね、正しくなくてっ」
つい、可愛げなく言ってしまう。
「べつに。俺は果音みたいに普通にしててくれる方が気ぃつかわなくていいからラク」
〝ラク〟って、ほめられてるのかなぁ?
「ところで果音、今日なんで途中から楽屋に戻ったの?」
「なんでって」
「マネージャーなんだからスタジオにいてくれないと」
少し迷ったけど、莉子を危ない目に合わせてしまったことを反省して、それからレオさんに助けてもらったことを報告するため、今日あったことを拓斗に話した。