「あ、そうだ。拓斗に渡したいものがあるの。はい、これ」
「何これ。ドリンク?」
わたしが差し出したのはドリンクボトル。
「えっとね、スムージーが入ってるの」
「スムージー? 野菜ジュースってこと?」
拓斗が眉を嫌そうによせる。
「そんな顔しないでよ。フルーツも入ってておいしいんだよ」
「まあ、果音がそういうなら信用しようかな」
シェフとしての腕前はすっかり認めてもらえているようだ。
「でもなんで俺だけ? 理澄の分は?」
拓斗の質問にちょっとだけギクッとする。
「拓斗、今日もきっと台本の暗記とか歌とかダンスとか、自主練するんでしょ? そのときのおやつ代わりっていうのかな。拓斗って遅くなったら夕飯抜きにしちゃうこともあるって鳴川さんから聞いたから」
〝拓斗だけ特別〟って言ってるみたいでなんだか恥ずかしくなって頬が熱くなってしまった。
「そっか、サンキュー! これで練習がんばれる」
拓斗がまた、満面の笑みをくれるから胸が「キュン!」って鳴った。さすが人気アイドル。
「あ、そうだ。拓斗と理澄くんにちょっとお願いがあって」
「お願い?」
「実は……」