——『今回のダンスでちょっとむずかしいところがあって』

あれ? でも、この前ショーンにダンスのことで質問してた。
少し不思議に思ったけど、ショーンに話しかけるための口実だったのかな? なんて思えばおかしいってわけでもない。
そのとき、〝ガラッ〟と、教室のドアが開いて先生役の俳優さんが入ってきた。
拓斗くんたちみたいな若くてキラキラしたアイドルとは真逆の見た目って感じの、モッサリしたロングヘアの俳優さんだ。目は長い前髪で隠れていて、不精ヒゲなんかも生えている。年齢は50代くらい?
背が高いからか、妙な迫力がある。
「なんか、怖い感じの人ですね」
ヒソッと鳴川さんに耳打ちする。
「ああ、レオさんね。今回の役作りであんな感じの見た目にしてるんだ。すごい俳優さんだよ」
「ふーん」
なんて、あまり興味なく〝レオさん〟を見ていたけど、一瞬で彼の演技に引き込まれてしまった。
拓斗くんの演技もうまいって思ったけど、申し訳ないけど全然レベルが違うって感じ。
どうやらこの先生は怖い先生って役みたいだけど、セリフがないときでも立っているだけでその怖さが伝わってくる。彼の目つきや声の演技に思わずゾクッと鳥肌が立ってしまった。