「虹瀬くんにもエキストラで出てもらうかもしれないから」
「は、はい」
二人の本物のマネージャー、鳴川(なるかわ)さんがわたしに声をかけてくれる。
「なんか、急にわた……僕まで面倒見てもらってごめんなさい」
彼にも、わたしが女の子であることは念のためヒミツにしている。
「ああ。大丈夫、大丈夫。拓斗に振り回されるのは慣れてるから。拓斗のご飯で悩まなくて済んで助かるよ」
そう言って笑ってくれた鳴川さんは、わたしのママと同じくらいの年齢のメガネにスーツのおだやかな男性だ。インテリって感じの見た目をしている。
「拓斗くんってワガママですね〜」
わたしが言うと、鳴川さんは苦笑い。
「ワガママっていうよりも素直って感じかな」
「素直……たしかに。一緒にいると、人気アイドルっていうよりもぜーんぜん普通の男の子って感じです」
今度はクスッと笑われる。
「彼がどうしてアイドルとして人気かって、きっとすぐにわかるよ」
鳴川さんの言葉に首をかしげる。
あ、この前の歌番組はたしかにすごかったかな。でもさっきも楽屋では『グリーンピースが嫌い』とか言って、やっぱり普通の男の子だった。