「あの人、根は悪い人じゃないと思う。果音が娘だって名乗り出たら、可愛がってくれるんじゃねえ?」
「うん……! そうだといいな」
拓斗くんが励ますように言ってくれたから、うれしくってニコッと微笑んだ。
「拓斗、顔が赤いけど」
「バーカ、そんなことねえし」
ニヤニヤする理澄くんの言葉に、たしかに拓斗くんの頬が少し赤い気がして、なんだかこっちも照れてしまった。

♪♪♪

その日の午後、お昼を食べ終わったら二人が出演するドラマの撮影が始まった。
男の子姿になって、教室のセットの外から撮影を見学させてもらう。
今回のドラマは二人以外にもアイドルが何人か出ている学園モノで、制作発表記者会見の記事をネットで見ていた莉子は大興奮だった。
わたしがその撮影現場にいるどころか、フィリックの二人に料理を作っているなんて言ったら、莉子はどんな顔をするだろう。わたしだってこんなことになってるなんていまだに信じられない。