「そんなことない! 二人だけでも、ずっとさみしくなんかなかった」
「嘘ばっかり。ママはずっと、パパのことを〝大人になったら教える〟って言って、果音にナイショにしてきたけど、果音は本当はずっと知りたかったよね」
ママの胸の中で、違うって首を横に振る。
「果音はもっと自分の気持ちを言っていいのよ。いつもママに気をつかって、『ママが』『ママの』『ママに』ってママの気持ちばっかり最優先の優しい子だったもの」
ママが、わたしの顔を見る。
「〝大人になったら〟なんて言ってたけど、果音はもうとっくに自分で判断できる年齢になってたのよね。パパの分のお弁当を作ってるって気づいた日に、果音が成長したんだってわかった」
ママはきっと、最初にパパに会おうとしてた日から気づいてたんだ。
「まさか本当に怜音くんに会ってるなんて思わなかったけど」
「今日、やっとレオさんがパパだってわかったの」
ママはニコッと笑ってくれた。
「そのお弁当の話なんだけど」
レオさんが口を開いた。
「果音ちゃんが僕の好物をあれだけ知ってるってことは、響ちゃんが果音ちゃんによくその話をしてたってことだよね」
レオさんの指摘に、ママの顔が赤くなる。
「ということは果音ちゃんの言うとおり、君は今でも僕のことが好きなんじゃないのかな?」
「そんなこと……」
ママが急に、照れを隠した子どもみたいな顔になる。