レオさんは、料理をしていて音に気づいてないみたい。
「ただいまー。果音、誰か来てるの? 玄関に靴が——」
そこまで言ってリビングに入ってきたママは、固まって荷物をドサッと落としてしまった。
ちょうど、レオさんがキッチンからリビングにやってきたタイミングだったから。
「おかえり、(きょう)ちゃん。久しぶり」
「怜音くん? どうして」
「どうしてって、なかなか難しい質問だなぁ。果音ちゃんと一緒に仕事をしたから……いや、仕事はしてないか?」
「そ、そういう意味じゃなくて! 何しに来たの!?」
「え、ママ?」
ママの態度が怒ったようになって、わたしの心臓が、さっきまでとは違う音でドクンッと鳴った。
「何しにって、ずいぶんだなあ」
「ね、ねえママ!」
二人の様子に不安になってしまう。
「レオさんが、わたしのパパなんでしょ!?」
「果音……」
「……それにママは、まだ、パパのことが好きなんでしょ?」
「果音ちゃんにも僕にも、知る権利があると思うなあ」
レオさんは、ずっと冷静だ。

ママは気持ちを落ち着けるように、小さく深呼吸した。