レオさんの最後のシーンが終わると、スタッフから拍手が起こって花束が渡された。
「おつかれさまでしたー!」
「レオさん、これから打ち上げなんですけど」
「ああ、申し訳ないんだけど、今日はこの後大事な用事があるんだ」
「そんなーレオさんが主役なのに」
スタッフの人はすごく残念そうな顔をしている。
「ごめんごめん、またそのうちね」
レオさんはそう言うと、まっすぐわたしの方にやって来た。
「今日、この後君のお家にうかがいたいんだけど、お母さんは家にいるかな」
「え、えっと……まだ仕事かもしれないですけど、家で待ってもらってかまわないです」
嘘みたい。まさかこんな……。
「えー? 拓斗くんも打ち上げ行かないの?」
「理澄が俺の分までもりあげるから!」
「まかせろー!」
拓斗もこっちにやって来た。
「俺も果音の家、行っていい?」
「う、うん」
来てほしい。拓斗に一緒に。
心臓が落ち着かなくてどうにかなっちゃいそうだから。

それからわたしたちは、レオさんの運転する車でわたしの家に向かった。
後部座席で、拓斗がずっと手を握っていてくれた。