「なあ、はやく食おうぜ、腹減った」
まだ1シーンも撮っていないショーンが言う。
こっちはお腹が減るより腹が立つんだけど! って思いながら、お弁当を広げる。
こんな態度でも、パパかもしれない人だって思うと、フタを開けた時の反応が気になってドキドキする。
ショーンがお弁当のフタを開けるのを、ついジッと見つめてしまう。
「ふーん……」
ショーンは中身をじっくり確認する。
「げっ」
「え……」
「俺、ポテトサラダ嫌い。それにまさかこの卵焼き、甘くないよな?」
ショーンはものすごく嫌そうな顔をしている。
失礼な態度に悲しくなるだけじゃなくて、このメニューが嫌いってことは、パパじゃないってことなんだってわかっちゃった。
「ちがったんだ……」
思わずしょんぼりと肩を落とす。
「ふりだしにも戻っちゃった」
泣きそうになってしまう。
「おいおい、なんだよ。俺が泣かせてるみたいじゃん」
「ショーンが泣かせてるみたいなもんだよ。文句言わずに食ってみろよ、果音の弁当ってウマいから」
「拓斗に言われたくないけどなー。キュウリ嫌いとか言ってたやつに」
拓斗たちの会話にも、なんだか悲しくなってしまう。
「パパだって思ったのに……」
涙がポタッと、お弁当箱のフタに落ちた。

「君はお父さんを探してるの?」

頭上からレオさんの声がした。