「え、君、女の子だったの?」
マ、マズい。
「えーっと、これはなんていうか、その……」
「ああ、大丈夫。べつに誰にも言わないよ。君が女の子でも誰に迷惑がかかるってもんでもないし」
レオさんは、わたしに何か事情があることを察してくれたようだった。
「ケガは大丈夫?」
「は、はい。湿布を貼っておけば大丈夫そうです」
「そうか。撮影は大丈夫だから、ゆっくり戻っておいで」
わたしはコクっとうなずいた。
「拓斗くんはどうする?」
「あ、俺も虹瀬と一緒に戻ります」
「虹瀬? 君は、虹瀬っていうの?」
彼はまた、驚いたようなリアクションをした。
「そうか、じゃあやっぱり……」
レオさんは何かをつぶやいている。
「監督には僕から言っておくから、二人ともゆっくり戻ってきなさい」
そう言って、レオさんはスタジオに戻って行った。
「レオさんが黙っててくれてよかった〜!」
わたしが安堵する横で、拓斗は無言で何かを考えている。
「拓斗?」
「ん? いや、何でもない」
それからスタジオに戻るまで、ううん、戻ってからも拓斗はなんだかぼんやり考えごとをしているみたいだった。

わたしはわたしで、

——『当たり前だよ。果音は特別だから、俺が守りたい』

さっきの拓斗の言葉の意味をあれこれ考えていた。