職場から3駅離れた、創作料理が美味しい居酒屋。

結婚式場に勤務するウェディングプランナーとして3年目になろうかという美川 華恋(よしかわ かれん)

昨年できた後輩の三上 親太朗(みかみ しんたろう)

会社の歓迎会の幹事の私と親太朗は、先に会場に行って準備をすることになっている。

出来ていなかった親太朗の歓迎会と、今年入った新入社員の歓迎会も兼ねている。

ラッシュに差し掛かる時間だからか、駅に人は多かった。

「この時間でも人多いのね」

「まぁ、華金ですからねぇ。
飲みたくなるんでしょう」

人波を華恋から身体全体で守るように、前に立ってくれる親太朗。

目的の駅に到着すると、周りの乗客たちによく通る声で降りる旨を宣言して、電車から降りた。

もちろん、しっかりと私の手を引くことは忘れずに。

「手。
降りやすくなって助かったけど、さすがに離してくれる?」

「嫌です、って言ったら先輩はどうします?
俺としては店までこのままでもいいですけど」

「冗談が上手いのね」

「冗談だなんてとんでもない。
俺はいつでも本気ですよ?

新入社員の後輩たちからもモテる華恋先輩のことだから、俺なんて眼中にないんでしょうけど。

先輩が卒業した母校の後輩としては、きちんとこう言っておきたいですね。

貴女に憧れて必死に正瞭賢(せいりょうけん)目指して受験勉強して、晴れて合格した、と。

貴女に憧れている身としては、華恋先輩に悪い虫がつく前に、貴女を俺のものにしたいくらいですけど」