結婚おめでとう。オーレリアンはいいやつだから、どうか幸せに。

 懐妊おめでとう。元気な子を産むためにも、ゆっくり休んでくれ。

 出産おめでとう。オーレリアンから、子どもたちの名前を教えてもらった。とても素敵な響きだった。

 子どもたちの一歳の誕生日おめでとう――この手紙は途中で終わっていて、次の手紙には乱雑な字が綴られていた。

 愛している、ずっと好きだった。

 君のことを抱けて、嬉しかった。君の唇をもらえて、嬉しかった。

 リリィ、愛している。

 リリィ、顔を見せてくれてありがとう。君はずっと、美しい。

 傷つけて、ごめん。ひどいことをして、ごめん。

 リリィ、ずっと君を、君だけを。

 君のもとに、ずっと一緒に、リリィ。

 ……一日で書いたのではない、心が壊れそうになるたびに書き足していったのだろう最後の便箋に書かれたものはもう手紙の形をなしておらず、黒いインクが飛び散った痕でしめくくられていた。

(……リリィ、か。そんなの、一度も呼んだことがないな)

 届くことのなかった手紙を箱に戻したオーレリアンは、目の前を手で覆って馬車の天井を仰ぐ。

 シャルルはリリアーヌを愛していたが、リリアーヌもまたシャルルを愛していた。

 家族以外で唯一、傷のある顔を見せてもいいと思うほどに。
「リリィ」という、他の誰も呼んだことのない愛称で呼ばれることを望むほどに。
 オーレリアンがずっと奪わずにいた唇へのキスを、許してもいいと思うほどに。
 ……命尽きる直前に、その幻を見るほどに。