……あれから、二年。
シャルルは順調に昇格を重ねて、士官となった。未だに「公爵家のコネを使ったに違いない」と言う者もいたが、相手にするのも馬鹿馬鹿しいので放っておいた。
自分の副官として、オーレリアンがついてくれた。彼とは正騎士になった頃からの仲で、「そこの坊主、遊ぼうぜ!」とあちら側から声をかけてきたのがきっかけだった。なお、そのときには「女の子がたくさんいる店」に誘われたが、行くのは断固拒否した。
オーレリアンはあまり昇格にこだわらないそうで、「おまえの世話をするのもいいかもな」なんて理由で副官になってくれた。事実、彼は態度と口調のわりに働きぶりは優秀だったので、年長の友人が副官になってくれてシャルルはとても嬉しかった。
オーレリアンが「せめて、事務担当の補佐官はつけた方がいいぞ」と助言したのだが……そのとき、リリアーヌのことを思い出した。オーレリアンが言うに、騎士団の士官以上の立場の者が自分の事務サポート係としてそばに置く補佐官は、文官から引き抜くことが多いそうだ。
もしリリアーヌが二年前のことを覚えていて、シャルルの申し出にうなずいてくれるのなら。そう考えると居ても立ってもいられなくて、シャルルはオーレリアンを連れて文官の棟に向かった。
――そこで、父親ともみ合うリリアーヌを見つけた。
シャルルは、彼女に手を差し伸べていた。
『素晴らしい出来です』
あのときシャルルを褒めてくれた女性を、助けたくて。立派になった自分を、見てほしくて。
……彼女を傷つける者から、守りたくて。
リリアーヌはどうやら、二年前の出会いを覚えていないようだった。だが、彼女からするとその年に何十人もいた正騎士の中の一人なんて記憶の彼方に飛んでいっても仕方がないと、受け入れた。
リリアーヌをそばに置けるだけで、シャルルは満足だったから。
シャルルは順調に昇格を重ねて、士官となった。未だに「公爵家のコネを使ったに違いない」と言う者もいたが、相手にするのも馬鹿馬鹿しいので放っておいた。
自分の副官として、オーレリアンがついてくれた。彼とは正騎士になった頃からの仲で、「そこの坊主、遊ぼうぜ!」とあちら側から声をかけてきたのがきっかけだった。なお、そのときには「女の子がたくさんいる店」に誘われたが、行くのは断固拒否した。
オーレリアンはあまり昇格にこだわらないそうで、「おまえの世話をするのもいいかもな」なんて理由で副官になってくれた。事実、彼は態度と口調のわりに働きぶりは優秀だったので、年長の友人が副官になってくれてシャルルはとても嬉しかった。
オーレリアンが「せめて、事務担当の補佐官はつけた方がいいぞ」と助言したのだが……そのとき、リリアーヌのことを思い出した。オーレリアンが言うに、騎士団の士官以上の立場の者が自分の事務サポート係としてそばに置く補佐官は、文官から引き抜くことが多いそうだ。
もしリリアーヌが二年前のことを覚えていて、シャルルの申し出にうなずいてくれるのなら。そう考えると居ても立ってもいられなくて、シャルルはオーレリアンを連れて文官の棟に向かった。
――そこで、父親ともみ合うリリアーヌを見つけた。
シャルルは、彼女に手を差し伸べていた。
『素晴らしい出来です』
あのときシャルルを褒めてくれた女性を、助けたくて。立派になった自分を、見てほしくて。
……彼女を傷つける者から、守りたくて。
リリアーヌはどうやら、二年前の出会いを覚えていないようだった。だが、彼女からするとその年に何十人もいた正騎士の中の一人なんて記憶の彼方に飛んでいっても仕方がないと、受け入れた。
リリアーヌをそばに置けるだけで、シャルルは満足だったから。