オーレリアンはからりと笑って言って、サンドイッチを次々に平らげていった。そうしてリリアーヌの方はまだ半分も食べられていないのに自分の分を完食させ、立ち上がった。

「そういうことだから、おまえもちょっとずつ自分の気持ちに正直になってみろよ。おまえたちに足りていないのは会話と、一緒に過ごす時間だ。あいつのことを避けずに、ちゃんと向き合ってやれ。デュノア将軍の副官としても、補佐官にはそうであってほしいと思っている」

 オーレリアンの言葉に戸惑うものの、騎士団での立場を出されるとリリアーヌは逆らえなくなり、こわごわうなずいた。

「分かりました。……オーレリアン、ありがとうございます」
「……」
「私もシャルル様も本当に、あなたに助けられています。あなたがいなかったら、どうなっていたことか」

 想像するだけで苦い気持ちになってきたのでリリアーヌが微笑むと、その笑みをじっと見た後にオーレリアンは「なあ」とどこか神妙に呼びかけた

 オーレリアンは少し目を細めて手を伸ばし、リリアーヌの眉間にそっと触れた。

「俺は、おまえたちなら大丈夫だと思っている。絶対に、うまくいくと信じている」
「オーレリアン、何を……?」
「だから、自分に嘘をつくなよ。シャルルは狭量でも馬鹿でもないんだから、おまえの言葉をちゃんと聞いてくれる。たださっきも言ったように、言いたかった言葉を言えないまま終わらせるのだけは、絶対にするな」
「……分かりました」

 いつも飄々としているオーレリアンから何やら鬼気迫るものを感じてリリアーヌがうなずくと、彼はすぐにいつもの笑顔に戻ってリリアーヌの額をぐりぐり指先で押し始めた。

「おう、その意気だ! ……しかしおまえ、実に押しやすい形のデコをしてるんだな」
「ちょっと、やめてください!」
「いいじゃないか。噂に聞いたんだが、ここを押すと頭痛が治まるそうなんだ」
「……前もそんなことを言っていたけれど、そのときは腰痛が治るって言っていませんでしたか?」
「おや、失礼。では俺はここで」

 自分が適当なことを言っているとばれたからか、オーレリアンはリリアーヌが本気で怒る前にと逃げ出した。

(本当に、あの人は!)

 騎士としても副官としても……そして悩み相談の相手としても優秀なのだから、あのへらへらした態度をどうにかしてほしいところだ。