リリアーヌはすっきりしない気持ちで出勤し、執務室でシャルルと顔を合わせる羽目になった。

 途端、昨夜のご乱心発言を思い出してしまい胃が痛くなってくる……が、現在執務室にはリリアーヌとシャルルの他に、若い騎士たちの姿もあった。

 シャルルは彼らと話をしており、リリアーヌが入ってくるのを見ると「ああ、おはようリリアーヌ」と当たり障りのない朝の挨拶をした。だからリリアーヌも「おはようございます」と何でもないふうを装わなければならなかった。

 シャルルと騎士たちが話をしている間に執務室内の片付けをしていたリリアーヌだが、ふと、続き部屋のドアが薄く開いており、そこからオーレリアンがちょいちょいと手招きをしているのが見えた。

「……オーレリアン?」
「よう、何やらお困りのようだな」

 彼に呼ばれて続き部屋に入る。ここは、いつもリリアーヌが昼休憩のときに使っている場所だ。

 オーレリアンに小声で問われたので、リリアーヌは肩をすくめた。

「どうということはないですよ」
「そうか? 俺は今日、確認したいことがあって早めに出勤したんだ。それなのに俺よりも先にシャルルがいて、びびったんだよ。おまえたち、何かあったのか?」
「何か、というほどのものでは……」

 だがリリアーヌは、オーレリアンの顔を見て考えを改めた。
 リリアーヌよりも付き合いが長く、また同性ということもありシャルルに近い存在であるオーレリアンならば、何か知っているのではないだろうか。

「……いえ、そうね。あなたに相談したいことがあります。ですが今は勤務時間ですので、お昼にでも改めてお声がけしてよろしいでしょうか」
「ああ、もちろん!」

 オーレリアンが言ってくれたので、リリアーヌはほっとしてその日の午前の勤務を行った。