(やばい!心臓が止まりそうだよ〜!)

泣き出してしまいそうになる日向の手に、大きな手が重なった。練のものだ。日向が隣を見ると、練は少し頰を赤く染めながら言った。

「……気休めになるかはわからないけど」

「ありがとう」

その瞬間、日向は恋に落ちた。



それから日向と練はよく話すようになり、高校が離れた今もこうして会っている。図書館の閉館時間が近付き、日向と練は帰ることになった。

「じゃあまた今度」

図書館を出て日向がそう言うと、「家まで送る」と練は言って日向の隣に並ぶ。顔を赤くしながら日向は「いいよ。悪いよ」と言ったものの、彼は聞かずに歩き出した。日向は慌てて昨日作ったお菓子を鞄の中から取り出す。

「これ、よかったら食べて!勉強と送ってくれるお礼!」

昨日作ったのはアップルパイ。πの問題は日向は解けないものの、アップルパイを作ることは得意だ。

「いいのか?」

「うん。練くんの授業料としては安いと思うけど」