「高校で円周率してるの?」

「いや。ちょっと疲れたから円周率について考えていただけだ」

「休憩で円周率の問題してるの?すごいなぁ」

「すごくはない。お前が菓子作りが好きなのと同じだ」

練はそう言い、円周率の問題をサラサラと解いていく。それを見つめながら日向は胸元にそっと触れた。勉強は苦手で苦痛だ。しかし、この時間が永遠に続いてほしいと思っている。練が隣にいるからだ。



練に恋をした日のことを思い出す。中学二年生の春のことだった。練とは同じクラスだったものの、接点がほとんどなかったため、日向は勉強ができる人としか思っていなかった。

そんなある日、日向は部活が一緒の友達四人で遊園地に遊びに行こうという話になった。日向を含めて女子二人、男子二人の四人である。

しかし当日男子の一人が急に来られなくなり、代わりに練が遊園地に来た。ほとんど話したことのない練の登場に日向たちは戸惑ったものの、練は色んな話題を振ってくれて、日向たちは自然と打ち解けていった。